看護師が伝えるトリコモナス膣炎のすべて|症状から治療法まで

みなさん「トリコモナス膣炎」という病気をご存じですか?
性感染症の一つで、デリケートゾーンのかゆみ、臭いのきついおりものなどが主な症状です。
この病気の怖いところは、女性では約50%、男性では約95%もの人に、自覚症状が表れないところです。
もしかしたら、知らないうちに感染してしまっているかも…今回は、あまりよく知られていないトリコモナス膣炎についてご紹介します。
トリコモナス膣炎の症状は?
女性の自覚症状には、
- 外陰部のかゆみ
- 外陰部にぴりぴりとした刺激を感じる
- 臭いのきついおりもの
- おりものに膿や血液が混じっている
- おりものが小さな泡を含んでいる
- 性行為時に膣に痛みを感じる
などがあります。これらの症状は一つだけのこともあれば、複数表れることもあります。自分では分かりませんが、膣が炎症して発赤します。子宮頚部が出血して、点状出血班が表れることもあります。
デリケートゾーンは、かゆくても人前ではかくことのできない部位ですね。
外出時には、掻きたいけど掻けない…痒みとの戦いになりそうです。おりものは生理用ナプキンなどで対処できますが、臭いまで防ぎきれるかどうか心配ですね。
性行為痛も、パートナーのいる女性にとって重要な問題だと思います。性行為がうまくいかないと、二人の関係に影響しないとも限りません。
デリケートゾーンの調子が悪いと、なんだか気分も憂鬱になってしまいますね。
まして性感染症?と思うと、とても不安になると思います。どうしてこんな症状が出るの?どうしてこんな風になってしまったの?どうすればいいの?病院に行った方がいい?パートナーにも言うべき?
などと悩み、どうしていいかパニックになってしまうかもしれませんね。でも自覚症状があるからこそ、体の異常に気付くことができたのです。病気に気づけば、対処法も見つかります!
このような自覚症状が出ればいいのですが、半数の女性には自覚症状がありません。そのため、トリコモナス膣炎に感染していると気づかないまま生活していくことに。自分が性感染症にかかっているままなんて我慢できない!という女性がほとんどだと思います。
トリコモナス膣炎の原因は?
どうしてトリコモナス膣炎になってしまうのでしょう?
原因は、トリコモナス原虫という寄生虫が膣に寄生することで起こります。寄生虫と聞くだけで、不快感が倍増しますね。一刻も早く体から追い出したくなります。
トリコモナス原虫の大きさは、約0.1mm。肉眼で見ることはできないので、自分では確認できません。トリコモナス原虫は、乾燥に弱く、水に強いという特性があります。感染力がとても強いと言われています。
参考:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Trichomonas_vaginalis_01.jpgどうしてトリコモナス膣炎になったのか?
トリコモナス原虫に感染する原因には、性行為があげられます。コンドームを使用しない性行為はもちろん、オーラルセックスでも感染します。その他には、タオルや下着の共有など、間接的に陰部に触れるだけでも感染します。
これを知ると不安になる方が増えると思うのですが、トイレの洋式便座、公衆浴場の浴槽や椅子、プールなどで感染することもあるよう。
普通に生活しているだけでも、トリコモナス原虫に感染する可能性があるのです。そのため、性行為をしたことのない女性や、子どもが感染することもあります。
性感染症と聞くと性行為での感染を思い浮かべてしまいますが、トリコモナス膣炎の感染経路は性行為だけではありません。ここの部分を勘違いしないようにしましょう。
でもこれだけ感染経路があると、どこで感染したのか特定しにくくなりますね。しかし感染する確率でいえば、ダイレクトに接触する性行為が一番です。
トリコモナス膣炎の潜伏期間
トリコモナス原虫に感染したからといって、すぐに発症するわけではありません。
トリコモナス膣炎には、5日~1か月(3週間が多いそう)の潜伏期間があります。この潜伏期間から、感染した原因が思い当たる方もみえるかもしれませんね。
もしかしてパートナーが原因?
性感染症に感染した時、性行為経験者であれば、性行為の相手から移されたのではないか?というのを一番に疑うと思います。
不特定の相手がいる場合ならまだしも、特定のパートナーから移されたと思うとショックも大きいですね。
真面目なお付き合いをしていて、パートナーのことを信じているならなおさらです。私以外の女性と浮気をしている?他にも性行為をする相手がいるの?と思い悩んでしまいますね。
男性がトリコモナス原虫に感染したら?
それでは、男性がトリコモナス原虫に感染したらどうなるのでしょうか?
なんと95%の男性が無症状です。まれに排尿痛や亀頭包皮炎を起こすことがありますが、大部分の男性がなんの症状もなく、感染していることにも気づいていません。そのため、女性に移してしまっても気づかないのです。
どこで感染したのか特定するのは難しいかも
最長1か月間の潜伏期間があり、性行為だけでなく、銭湯や便座からも感染する恐れがあるため、感染源を特定するのは難しそうです。パートナーのせいにして、責めるのはやめておいた方がよさそうですね。
トリコモナス膣炎?と思ったら病院へ!
トリコモナス膣炎は、自然治癒することはありません。様子をみていても、トリコモナス原虫が繁殖するだけです。
トリコモナス膣炎を治すのには、病院での治療が必要になります。トリコモナス膣炎ではなく、他の病気かもしれません。
性感染症にはいろんなものがあるので、自己判断は危険です。どんな病気なのか正確に知り、正しい治療を行うためには、婦人科を受診するのが一番です。
妊娠前の女性だと、婦人科を受診したことのない方もみえると思います。
慣れない科を受診するのは、不安かもしれませんね。性感染症が理由というのも抵抗があると思います。
でも医療スタッフには守秘義務があるため、あなたがどんな理由で受診しようとも、他の人にばらしたりはしません。
それに性感染症にも慣れているので、あなたのことを変な目で見たり、特別視したりしませんよ。
もし不快な思いをさせられたら、他の病院に変わればいいだけのことです。婦人科にはいろんな病気の方がみえるので、あなたも気兼ねなく受診してください。
病院ではどんなことをするの?
医師の問診を受けます。
問診では、自覚症状、既往歴、生活習慣、性行為の有無などを質問されます。
プライベートなことをこたえるのに抵抗があるかもしれませんが、病気の発見・治療には必要なことです。できるだけ正確に答えるようにしましょう。
内診で、外陰部や膣を診てもらいます。
内診台初体験の方は、デリケート部分がオープンになるその姿勢に腰が引けてしまうかもしれません。
でも内診台は、子宮がん検診、妊娠・出産時などにもお世話になるものです。みなさん乗っているので頑張ってください。
トリコモナス膣炎の検査
内診の時に、綿棒を膣の中に挿入しておりものを採取し、そのおりものを顕微鏡で調べます。
そこで運動しているトリコモナス原虫が確認できたら、トリコモナス膣炎だと確定されます。
トリコモナス膣炎の治療法
トリコモナス膣炎だとわかったら、薬物治療を行います。
トリコモナス原虫に効果のある抗原虫薬(メトロニダゾール、チニダゾール)の膣剤を直接膣に入れたり、内服薬を内服したりします。
薬物治療は、7~10日程続けなければいけません。きちんと完治させるためにも、医師の指示をきちんと守るようにしてください。
決められた期間薬物治療を行った後には、再度検査を受けて、トリコモナス原虫が消えていることを確認しましょう。検査で確認することで、再発を防ぐことができますよ。
治療しないとどうなる?
治療しないで放置していると、トリコモナス原虫が他の器官にも感染し、外陰炎、尿道炎、膀胱炎などを起こすことがあります。
トリコモナス原虫が感染していることで膣内のバリア機能が低下するため、他の病気にもかかりやすくなります。
そして不妊症の原因にもなると言われています。将来子供を希望している人にとって、大きな問題になりますね。
治療はパートナーも同時に行いましょう!
治療するのに大切なことが、パートナーも同時に治療しないといけないということです。
トリコモナス膣炎は性行為で感染するので、女性だけ治療しても、パートナーが感染したままだとまた移されてしまいます。
お互いに移し合わないためにも、同時期に治療を行い、完治するまで性行為はしないようにしましょう。
パートナーにはどうやって伝えればいい?
お互いに冷静になって話合うようにしましょう。
性感染症にかかってしまったということは言いにくいことですが、お互いのためにもきちんと話合い、治療することが大切です。
その時には、
- トリコモナス膣炎は性行為以外でも感染する病気であること。
- 感染力が強いこと。
- 男性は感染しても大部分の人が無症状であること。
- 薬物治療をしっかりとすれば治ること。
などを説明し、泌尿器科を受診するようにすすめてください。
常識ある男性であれば、きちんと治療してくれるはずです。治療してくれないようなら、その男性との付き合い方を考えなおした方がいいかもしれません。
トリコモナス膣炎の予防法
第一に、性行為の際にはコンドームを使用するようにしましょう。コンドームを使用することで、性感染症にかかりにくくなります。
不潔な公衆浴場やプールなどを使用するのを避けるようにしましょう。銭湯の椅子など共同で使用するものは、使用する前にきれいに洗い流してください。
便座を使用する時には、除菌してから使用するといいでしょう。
トリコモナス膣炎についてご紹介させていただきました。
何か症状がある方は、速やかに婦人科を受診してださいね。早期発見・早期治療が大切です。症状がない方でも、気になるようでしたら検査を受けてみてください。
これを機に、いままでの生活習慣を見直してみるのもいいですね。